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988の名簿 —— 中国AIモデルを、当局の台帳から読む / The China AI Registry — Reading Chinese AI from the State's Own Ledger

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The China AI Registry

"The five Chinese AI models you can name are under 1% of the ones China counts."
(あなたが名前を言える5つの中国AIモデルは、中国が数えているものの1%に満たない)

License: CC BY 4.0 Language Last Updated

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定義|What is The China AI Registry

本書とは、山内怜史(Satoshi Yamauchi)による、中国のAI産業を当局の登録 名簿を母集団として構造化した分析である。中国では生成AIサービスの提供に 当局への備案(登録)が要る。2026年6月30日時点で備案済みサービスは988件、 登記済みアプリケーションは598件であり、個社名入りの名簿が2ヶ月ごとに 公表されている。規制のために作られた記録だが、結果として生成AIの社会実装を 全数で追跡できる公的記録になっている。米国・EU・日本には、本調査の範囲で これに対応するものを確認できなかった。名簿には製鉄所の転炉制御、 鉱山の安全生産管理、水道局のコールセンター、市民ホットライン、褥瘡管理、 災害対応が並び、テスラ上海・IKEA・シーメンス・BMW・コカ・コーラ・ASUSの 外資6社も同じ形式で登録されている。本書は988件を業種別に整理し、読者が 自業界の実装事例を社名とモデル名のレベルで引ける形にする。あわせて、 上場したAIラボの監査済み決算から、計算資源のコストが売上原価とR&D費用に 分かれて計上される構造を読む。中心命題:この産業は、企業では数えられて いない。名簿で数えられている。

(2026年10月18日追記)
2026年9月14日の公告で、2026年8月31日時点の累計は備案1,112件、登記731件になった。

This book is a structural analysis by Satoshi Yamauchi that uses China's official generative-AI filing registry as its population. As of 30 June 2026, 988 services and 598 applications are registered, and the named lists are published every two months. The ten or so companies discussed abroad are a fraction of that. The rest includes steel-converter control, a water utility's call centre, a municipal hotline, and a Lao-language foundation model — alongside Tesla Shanghai, IKEA, Siemens, BMW and Coca-Cola. Eleven central state-owned enterprises appear under a jurisdiction code rather than a province. The five Chinese AI models you can name are under 1% of the ones China counts. The industry is not counted by companies — it is counted by a registry, and the registry is public.

(Added on October 18, 2026)
Following the CAC notice of 14 September 2026, the cumulative totals as of 31 August 2026 stand at 1,112 services and 731 applications.

利害関係の開示 / Disclosure:著者は中国の政府機関、AI企業、半導体企業の いずれとも取引関係を持たず、いずれからも資金提供を受けていない。本書は 独立分析である。中国政府の公告は中国側が自国の制度をどう設計したかの表明 として扱い、上場企業の決算は企業側の説明として扱う。どちらも中立の記述と しては扱わない。The author has no commercial relationship with any Chinese government agency, AI company, or semiconductor firm, and receives no funding from any of them. Government notices are treated as the state's own account of its system, and audited filings as the companies' own account of themselves — neither as neutral description.

著者・全書籍一覧 / Author & full catalog: github.com/Leading-AI-IO


📖 概要

DeepSeek。Qwen。Kimi。GLM。MiniMax。日本語圏で「中国のAIモデル」が語られるとき、現れる名前はおおむねこの5つに収まる。ベンチマークのスコアとAPI価格を横に並べた比較表が作られ、そこで議論が終わる。この5社は実在するし、表の数字も正しい。

問題は分母である。この5社は、中国のAI産業の何割を占めるのか。

表を作った側も、読んだ側も、この問いに答えられない。分母を知らないまま、分子だけを比べている。中国は不透明だから仕方ない——そう説明されることが多い。だが分母は推計する必要がない。中国当局が、個社名入りで公開している。

中国では生成AIサービスの提供に当局への備案(登録)が要る。2026年6月30日時点で備案済みサービス988件、登記済みアプリケーション598件。個社名入りの名簿が2ヶ月ごとに公告され、2024年4月から2026年6月まで12回分が積み上がっている。規制のために作られた記録だが、結果として生成AIの社会実装を全数で追跡できる公的記録になっている。

(2026年10月18日追記)
2026年9月14日、CACは2026年7月から8月の分を公告した。新たに備案124件(うちスマートフォンの端末側で動くサービス7件)、登記133件が加わり、2026年8月31日時点の累計は備案1,112件、登記731件になった。附件は13回分になった。

そこに何があるか。製鉄所の転炉制御(河北永洋特鋼「転炉智能煉鋼大模型」)。鉱山の安全生産管理。水道局のコールセンター(北京市自来水集団「京水客服」)。市民ホットライン(北京市市民熱線服務中心「12345智能体」)。褥瘡の管理支援(江蘇省人民医院「舒圧伴・PressGuard」)。災害対応(応急管理部大数据中心「久安-知言」「久安-知図」)。石油・天然ガス管網・電力・航空・物流・アルミの基幹企業が、自前の大規模モデルを登録している。対話アシスタントでも社内文書検索でもない。プロセスと公共サービスそのものである。

外資も同じ名簿にいる。テスラ上海(序号843)、IKEA中国(序号825)、シーメンス中国(序号674)、コカ・コーラ上海(序号877)、BMW中国(序号912)、ASUS上海(序号823)。中国企業と同じ列構成で、通し番号で並んでいる。中国事業を持つ企業にとっては、そのまま先例の所在になる。

一方、日本語圏で語られる中国AIモデルは10社前後である。なぜその10社なのか。品質で選ばれたのではない。海外からAPIで叩けるか、重みが配布されているか、英語の情報があるか——この到達フィルタを通過したものだけが記事に現れ、通過しなかったものは存在ごと消える。転炉も、水道も、褥瘡も、災害対応も、このフィルタを通過しない。 社外に売っていないからである。

分類の基準も当局側にある。属地欄には省でも直轄市でもない 「国资委」 という区分があり、この行は備案番号が例外なく ZhongYangQiYe- で始まる。該当は全期間で11件。中国石油天然気集団(CNPC)、国家石油天然気管網集団(PipeChina)、中国電力科学研究院、中国電科集団(CETC)、中鋁集団(Chinalco)、国家能源集団。日本で言えば、JERA・NTT・JR・日本郵船・日本軽金属が、それぞれ自社の大規模モデルを持ち、国に登録している状態である。

順序にも通説とのずれがある。備案の起点は2023年8月31日で、同日に8件が並ぶ。百度、智譜、ByteDance、百川、中国科学院自動化研究所、MiniMax、SenseTime、上海AI Lab——国家研究機関が初日から入っている。一方、DeepSeekは序号152、2024年5月13日である。 智譜の76倍、Moonshotの9.5倍遅い。

そして開示では、通説が逆転している。智譜(HKEX 2513)とMiniMax(HKEX 00100)は2026年1月に香港上場を果たし、監査済みの年度決算を公表している。 MiniMaxの2025年度は売上US$79.0百万(+158.9%)、粗利率25.4%、うち73.0%が中国本土外。最大の計算資源支出は売上原価ではなく**R&D費用(US$252.8百万・売上原価の4.3倍)**に計上されており、粗利率25.4%は推論だけを見た数字である。 自社でAIサービスの収支計画を立てるとき、この分離を知らずに他社の粗利率をベンチマークすると、必要な資金を大きく見誤る。同じことをOpenAI・Anthropicについて確認することはできない。両社とも非上場である。

読者が持ち帰れるものは三つある。(1)第4章で988件を業種別に整理し、自業界の実装事例を社名とモデル名のレベルで引ける形にする。(2)第8章で外資6社の備案から、中国市場に出すときの実務の先例を示す。(3)第6章でAI事業の経済性を監査済みの実数で読む。

中心命題は一つである。この産業は、企業では数えられていない。名簿で数えられている。

なお本書は、一次資料に到達できなかったものを扱わない。各モデルの技術的性能の比較、ベンチマークスコアの検証、多くの企業の学習チップ、iFlytek「星火」およびSenseTime「大装置」の計算基盤の販売形態、各モデルの日本語性能の独立測定——いずれも主題に関わるが、測定者・測定日・バージョンの三点が揃った公開データが存在しないか、企業側が公表していない。到達できなかったものを、到達したかのように書かない。 また備案は「登録した」以上の意味を持たない。名簿に載っている実装が成功しているかどうかを、本書は検証していない。


📄 ドキュメント

ファイル 言語 内容
the-china-ai-registry_JP.md 🇯🇵 日本語 本文(日本語版)
the-china-ai-registry_EN.md 🇺🇸 English 本文(英語版)

🔄 更新履歴

本書は定点観測型のOSS書籍である。対象が現在進行で動いているため、事実が動くたびに追記し、以前の記述が当たったか外れたかを版として記録する。

本書の改訂周期は、著者の都合ではなく当局の公表周期に同期する。 CACは2ヶ月ごとに新しい附件を公告する。件数は増え、属地の分布は動き、新しい類型の登録者が現れる。本書はその都度、名簿に戻って数え直す。

版 日付 内容
v1.0 2026-08-28 初版公開(備案 序号1〜988/登記 序号1〜598・附件1〜12 全数連結)
v1.1 2026-10-18 CACの2026年9月14日公告(2026年7〜8月分)の累計値を追記(備案1,112件/登記731件)。附件13の個票の連結と、第4章の業種別・属地別の数え直しは次版で行う。終章に、Moonshot AIの香港上場申請の報道を追記(報道ベース)

📑 目次

  • 序章: この5社は、中国のAI産業の何割か
  • 第1章: 名簿の読み方 ── 当局が数えているもの
  • 第2章: 起点 ── 2023年8月31日の8件
  • 第3章: 認知の順と、登録の順は違う
  • 第4章: 実装のカタログ ── どの業務に、AIが入ったか
  • 第5章: 依存の方向 ── チップ・重み・国家
  • 第6章: 開示の非対称 ── 上場した中国、していない米国
  • 第7章: この産業を読むための四つの軸
  • 第8章: 日本の読者は、この名簿から何を学べるか
  • 終章: 名簿では分からないこと

🔗 Related Projects

本書は、以下のOSSプロジェクトと相互に接続されている。

プロジェクト 概要 リンク
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👤 著者

Satoshi Yamauchi (山内 怜史)

  • AI Strategist & Business Designer at Sun Asterisk Inc.

  • Founder / AI Strategist at Leading.AI

  • 15年以上にわたりBusiness・Technology・Creativeの3領域を越境。フューチャーアーキテクトでITコンサルタントとして40案件のPL/PMを推進後、リクルートで事業戦略・新規事業開発に従事。Sun Asteriskでビジネスデザイナー兼AIストラテジストとして、新規事業×生成AIの方法論「Depth & Velocity」を体系化。

  • This project is part of the research by Leading.AI.

  • 📒 Read my insights on Note

  • 🌐 Visit Leading.AI Official Website


🤝 Contributing

Issues and Pull Requests are welcome. 本書の構造分析に対するフィードバック、CAC備案名簿の新規公告、上場企業の開示情報、一次資料の追加、誤字脱字の修正、翻訳へのContributeを歓迎します。

とくに、本書が「原典未到達」として本文から除外した以下の項目について、一次資料への到達経路をご存知の方からの情報提供を歓迎します。

  • 智譜(HKEX 2513)2025年度決算の原本
  • GLM-5.3のライセンスおよび重みの実配布状況
  • 各社の学習に用いられたチップ
  • iFlytek「星火」・SenseTime「大装置」の計算基盤の販売形態と導入規模

📝 License

This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
© 2026 Satoshi Yamauchi / Leading AI — Licensed under CC BY 4.0

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